RCTでマスク有効のバングラデシュ論文の怪しさ
RCTでマスク有効性のバングラデシュ論文の怪しさ
- そもそも 11.6% 減という僅かな差しか出せてない
- 60歳以上サージカルマスク35%減の効果? でも他では?
- この研究はそもそもマスクのRCTなのか?
マスクでコロナ感染拡大防止にRCTで効果有りの有意差が出たとする論文として、バングラデシュの村で2020年11月から2021年4月にかけてRCTを行った論文 ABALUCK2022[1] があります。しかしこの論文には上に示した問題点やありますので解説していきます。
そもそも 11.6% 減という僅かな差しか出せてない
- マスク介入でコロナ患者が 11.6% 減という僅かな差しか出せてない
- 5ヶ月マスクさせて、1万人中860人のコロナ患者が760人になる程度
バングラデシュ論文では、マスク介入でコロナ患者が 11.6% 減という僅かな差しか出せていません。実数に治すと、5ヶ月間で、マスク非介入では 13,287人中1,143人がコロナ症状が出て、マスク介入群では 12784人中1975人にコロナ症状が出たことになります。数値的に有意な減少となっていますが、マスクには既に伸べたようにデメリットもあるのに、11.6%減という結果が正しいとしても、この程度の減少で介入すべきだとは筆者には考えられません。
60歳以上サージカルマスク35%減の効果? でも他では?
- 布マスクでは駄目だし、子供にマスクをさせる根拠になならない。
- 60歳以上の布マスクでは悪化(有意差無し)
- 40代のサージカルマスクでは悪化(有意差無し)
更に論文では、サージカルマスクを使用した村では、60歳以上の血清有病率が35.3%有意に減少したとありますす。しかし60歳以上の布マスクや、40代のサージカルマスクではむしろ悪くなっています(ただし有意ではありません)
これでは少なくとも布マスクは効果あったといえませんし、子供にマスクをさせる根拠になりません。更に言えば、60歳以上など特定の年代にだけ有意にサージカルマスクが効果あるという結果はおかしいと感じます。筆者は、これは区分を細かくした結果、たまたまある集団にだけ有意な結果が出ただけだと考えています。
この研究はそもそもマスクのRCTなのか?
- 研究はクラスター(集団)RCT。村ごとにマスク着用と非着用振分け
- スタッフが村ごとにマスク着用とソーシャルディタンスも推奨
- 仮に効果が出たとしても純粋なマスクの効果かは疑問
- 論文としても Chikina2021[2] がバイアスの指摘
この研究はクラスター(集団)RCTというもので、ある村ではスタッフがマスク着用を促し、その他の村では促していません。マスク着用を促した村では、スタッフは他にもソーシャルディスタンスを促しており、仮に効果が出たとしても純粋なマスクの効果といえるかは疑問です。
この疑問点は、論文としても Chikina2022[2] は無視できないサンプリングバイアスとして指摘しています。
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参考文献