まえがき

「新型コロナ騒ぎはインフォデミックである」

2019年12月に武漢で新型コロナウイルスによる感染症が報告されて新型コロナ禍が始まりました。特に2020年2月にダイヤモンド・プリンセス号で内での感染が確認され日本では連日ニュースとなり日本が危機感に包まれ、3月にはイタリアやニューヨークで医療逼迫がニュースになり、世界中がパニックとなりました。世界では学校の閉鎖やロックダウン、マスク着用の義務化などが推進されていき、最終的には急造ワクチンの接種推進となりました。

しかし筆者は、2020年3月に武漢での新型コロナ感染症の年代別致死率(CFR)が出て、若者と高齢者では10倍の違いがあることを知り、コロナは最悪、高齢者など脆弱な方が、風邪をこじらせたら亡くなる可能性が若干増えた世界が来るだけだと認識しました。この頃、スウェーデンは学校を閉じない、またロックダウンをしない対策を発表し、筆者は絶賛しました。誰もがデータを見ればスウェーデンの対策が正しいと理解してくれる筈だと当初は思い、以降、データに基いた情報発信をしてきました。

筆者の専門は情報通信で、特にインターネット分野に関わるものです。1989年に京都大学工学部情報工学教室に入学して、1990年の2年生から学生実験としてインターネットに接続されたコンピュータ(ワークステーションと呼ばれるPCより少し高級なもの)を利用し始めました。

当時から電子メールやファイル転送サービス(FTP)は使えましたが、WEBはまだありませんでした。全てのコンピュータがインターネットに接続されていたのは、当時としては先進的な環境だったと思います。專門的な話になりますが、全てのコンピューターにグローバルIPアドレスが割合てられ、ネットワークセキュリティという概念はほぼ無く、台数は現在に比べれば圧倒的に少ないものの、今以上に世界中のコンピュータがシームレス(継ぎ目無し)に接続されていた環境でした。

私の少し上の世代の先輩方、先生方は、インターネットを日本に引込んだ方々で尊敬できる方々、でした。そう、残年ながら過去形で書かざるを得ないのです。

今回のコロナインフォデミックに筆者以外ほとんどやられてしまいました。ここでインフォデミック(infodemic)とは情報(information)とパンデミック(pandemic)とを掛合せた言葉で、ネットで間違った情報が拡散してしまうことです。世間一般で信じられているコロナ禍でのインフォデミックとは真逆で、新型コロナが特別恐しいとか自粛やマスクやワクチンが有効という情報の方が間違った情報なのです。

もちろん他にもインフォデミックに気付いていらっしゃる方が居ることは知ってますし、明確な意見を表明して無い方の中でも気付いている方がいらっしゃると思います。しかし「インフォデミックだ」と断言し情報発信をずっと続けているのは情報通信分野には筆者しかいません。今現在2023年6月に至っても「私もお手伝いします!」と表向き表明する人は先輩にも同世代にも後輩にもいないのです。ただし陰ながら応援して下さる方はいらっしゃいます。

私は声を大にして「貴方がたの引込んだインターネットがインフォデミックのツールとして使われているんですよ! 」と訴えていたのですが、全く通じません。この同分野の方々への想いは、医師、ウイルス学者、免疫学者、分子生物学者、ライターなど少数ながらも声を上げていた色んな分野での方々が等しく感じたのでは無いでしょうか。

コロナ禍でこれまでの繋がりの多くが断たれたと感じています。御自分でワクチン接種なさっただけの方であれば将来「あの時は皆でワクチン射って、馬鹿なことしたなー」と笑い合える日が来るかもしれません。しかし「若者も射つべきだ」「射たないなんてけしからん」と言っていた人達とそういう日が来ることは残念ながら想像できません。

フェイスブックで自分の考えを表明すると「お前は間違っている。人の命を何だと思っているんだ。性根を叩き直してやる」的な返答が来ました。フェイスブックでの情報発信で精神を病んでしまったので、放置状態だったツイッターをメインの情報発信の場としました。ツイッター上では同じ考えを持った同志に出会えました。この友達は残り30年かそれ以下の人生において宝になることを確信しています。

その中で友達になったツイッター上での有名人「自粛マスク考察マン」の一言が印象的です。

「このコロナ禍で人脈が増えなかったやつはそれだけ駄目だろう」

人脈広がったので、まだ何とか生きて精神も病まずに情報発信活動を継続していけそうです。


本書の狙い

新型コロナのパンデミックが始まって3年以上が経過しました。世界保健機関(WHO)の統計によると、日本以外の国で対策が概ね終った2022年4月末までに世界中で5億人が感染し、600万人以上が死亡しています。この2年間、我が国でもあらゆる手立てがとられた訳ですが、その一方で、「あの対策はほんとうに正しかったのか?」と検証すべきものもたくさんあります。パンデミックではなく、インフォデミックによって生活を壊され、未来を奪われた人も少なくはありません。

2023年5月8日にロナが5類となり強制的な感染対策はほとんど無くなりました。しかし細かい推奨は残っています。そのせいで通勤時間帯はマスク率9割であったり、学校では、特に女子中学生に関して聞く機会が多いのですが、まだ多くがマスクを外せなかったりと聞きます。今こそ何が真実で何が「トリック」であったかのか統計データで検証することで知り、次なる危機に過剰対応しないで済むリテラシーを読者に持っていただくのが、本書の狙いです。

余談ですが、ここでトリックという言葉を用いたのが、筆者がプロマジシャンでもあるためです。筆者はマジックのトリックには2種類あると考えています。一つは不思議なことを巧妙なトリックで実現すること。皆が思うトリックは基本的にこれでは無いでしょうか。しかしもう一つ、気付きにくいものがあります。それは、当り前のことなのだけど、特別なことと思わせるというものです。コロナ騒ぎは2番目のトリックに相当すると考えています。

端的言えば、風邪などの感染症で高齢者など免疫力が弱い方が亡くなるのは、これまであったことで社会が許容してきたのに、コロナだけは特別で、高齢者を守るために感染拡大を防がなければならないと思わせたり、マスクで呼吸器系感染症を防げないことは研究として明らかだったのに、マスクに効果があるように、つまり特別なものと認識させたりという工合です。

以下、本書ではまず三つのトリックとして

を取り挙げます。そしてこれらのトリックに騙されないための情報リテラシーについて書いていきたいと思います。