専門家がマスク有効と根拠にするRCTメタ解析論文の怪しさ


専門家が参照するRCTメタ解析論文は効果あり?


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西浦氏や尾身氏が「新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」に提出した資料で参照されている、マスク有効とするRCTメタ解析論文の怪しさを解説します。

名を連ねてる人達は、読めばおかしな論文だと分かるはずなので、おそらく中身を読んで理解していないと思われます。

この論文は2022年査読済み論文ですが、2016年までの論文の再解析であり、解析においてコロナ禍での知見は含まれていません。2016年までの論文を再解析するとマスクに効果はありましたという内容です。この時点でおかしな話です。

一方で既に紹介した2023年1月のコクランレビュー Jefferson2023 ではコロナ禍でのマスク論文も解析に組込まれています。


RCTメタ解析でマスク有効論文 Li2022 の怪しさ


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Li2022 ではマスクRCTメタ解析で有意な予防効果が認められた(OR = 0.84; 95% CI = 0.71-0.99; I2 = 0%)としています。

しかしまずフォレストプロットを見て分ることは、これは本当に複数論文のメタ解析ですか? ということです。論文全体で Aiello博士の二つの論文の Weight は合計で86%です。特に2週間以降の解析にはAiello博士の論文で100%を占めています。

そもそもAiello博士は二つの論文で、マスク介入で有意な効果は示せなかったというのが結論です。更に Aiello博士の 2010年の論文は、コクランなど、他のメタ解析論文はランダム化が不十分との理由で採用されていません。


Li2022 はどういう操作をしているのか


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では Li2022 はどういう操作をして有効性を出しているのでしょうか?

まず前述の通り、他のRCTメタ解析論文では弾かれている Aiello2010 を組込みます。2週間以降の論文が Aiello論文しか無いことで、 Aiello だけで2週間以降の subtotal を出します。2週間と 2週間以降(3週目〜6週目)後者の方が期間が長いので Weight が大きくなります。

また Aiello2010 では1〜2週間の結果は比較的前半が悪く、後半がよくなっています。逆に Aiello2012 は前半の結果は比較的、前半がよく、後半が悪くなっています。Aiello2010 と Aiello2012 との2週間以降を纏めて解析することで2週間以降の有意な効果が示されるということが起きたようです。これは統計では人週が増えると CIの範囲が狭まるので起きうる現象です。2週間に関しても他の論文を組込んでいますが話は同じです。

纏めると元の論文執筆者が有効では無いとしている論文に他の論文を少し組入れて期間を分割して解析し直すと有意な結果が出せる、というメタ解析論文もで恣意的な結果は幾らでも出せるという悪例となっています。


Li2022はコロナ禍でのマスクRCT論文を解析に組込まず

なおLi2022の論文ではコロナ禍でのコロナ禍でのマスクRCT論文を解析に組込んでいません。論文としては問題無いのですが、コロナ禍でのマスクRCT論文が解析に入ってない論文をわざわざ日本の専門家が取上げたのは何故でしょうか? マスクに効果があると言いたかったため都合のよい論文を選んで取上げたのだと言われても仕方無いでしょう。


参考文献

  1. LI, Hui, et al. Efficacy and practice of facemask use in general population: a systematic review and meta-analysis. Translational Psychiatry, 2022, 12.1: 49.