マスク効果有りRCTメタ解析論文はフランケン

マスク効果有りとするRCTメタ解析論文が出ているので 2022年4月に出ているので検証します。

図中の上の表二つは、マスクに効果は無いとするRCTメタ解析論文、Xiao さんら 2020年の論文[1]から取り出したもので、「A. マスクのみ」と「B. マスクと手洗い」のメタ解析結果が書いてあります。

「A. マスクのみ」の論文に複数の論文が並べられてあり、その Risk Ratio (RR) が 1未満であれば、マスクが有効であることを示し、1より大きければマスクはむしろ逆効果を示します。95%CI(信頼区間)も書いてあり、これが 1を跨いでいると、有意とはいえないということになります。

例えば一行目、Aiello2010年の論文の結果はマスクの効果は 2.34 で計算ではむしろ逆効果という結果が出ています。しかし信頼区間は 0.56-9.72 と 1を跨いでますので、逆効果という結果は有意では無い、つまり結論としてはどちらともいえない、となります。

最終的な結論としては、最後の行 RR が 0.78 でマスクに 22% の効果ありを示したものの、95%信頼区間では有意とは示せませんでした。

一方で、下の表はマスク効果有りのRCTメタ解析論文 Chen2022[2]から取ってきたものです。まず気付くのは RR 1 未満の論文しか参照しておらず、Xiao2020 の論文で RR が 1より大きかった論文は排除したようだということが分ります。

Cowling2008[3] の論文の値が Xiao2020 と Chen2022 とで違いますが、全体の結果では無く36時間以降だけを抽出した結果を Chen2022 で参照したようです。こんな抜出し方ををしてよいのでしょうか?

Larson2010[4] の論文は本来、 Xiao2020 では 「B. マスクと手洗い」に組込まれているように消毒液やマスクを使ったときとそうでないときを比較する論文でした。しかし論文には無い「消毒液だけ」と「消毒液+マスク」を比較した値を用いたようです。その比較なら違いはマスクしか無いから、マスクの有効性を示す値と判断したのでしょうか。

Chen2022 に組込まれている MacIntyre2015[5] は Xiao2020 には組込まれていません。これは MacIntyre2015 が N95 マスクに対して布マスクやマスク無しはどれだけ効果があるか(無いか)を比較する論文だからです。論文の結果としては N95 マスクは布マスクやマスクに対して有効であったというものです。ただし布マスクはマスク無し以上に逆効果でした。その論文のN95マスクの有効性だけを取出して Chen2022 に組込んだのでしょう。

以上、こんな恣意的な抜出し方をして解析すればどんな結果でも好きに作れてしまいます。RCTメタ解析論文と銘打っては駄目でしょう。

筆者の結論として「マスクが有効だとするメタ解析RCT論文はありません」となります。

以下、余談です。

うん、分らん。

書いてることじゃなくて、何を主張したいのかが分らんということ。

こっちの主張は、
「マスクで感染者が減るというRCTメタ解析論文は無い」

そして誰も「マスクで感染者が減るというRCTメタ解析論文」は示さなかった。

示したら返事するよ。https://t.co/iI6etJZjI1

— 藤川 賢治 (FUJIKAWA Kenji) @ 医療統計情報通信研究所 所長 (@hudikaha) July 24, 2022

RCTのメタ解析になってないという指摘は無視するのね。了解。

後は平行線なので、ミュート。https://t.co/awlKrbhcSe

— 藤川 賢治 (FUJIKAWA Kenji) @ 医療統計情報通信研究所 所長 (@hudikaha) July 24, 2022

参考文献

  1. XIAO, Jingyi, et al. Nonpharmaceutical measures for pandemic influenza in nonhealthcare settings—personal protective and environmental measures. Emerging infectious diseases, 2020, 26.5: 967.
  2. CHEN, Yiming, et al. Associations between wearing masks and respiratory viral infections: a meta-analysis and systematic review. Frontiers in public health, 2022, 1015.
  3. COWLING, Benjamin J., et al. Preliminary findings of a randomized trial of non-pharmaceutical interventions to prevent influenza transmission in households. PloS one, 2008, 3.5: e2101.
  4. LARSON, Elaine L., et al. Impact of non-pharmaceutical interventions on URIs and influenza in crowded, urban households. Public health reports, 2010, 125.2: 178-191.
  5. MACINTYRE, C. Raina, et al. A cluster randomised trial of cloth masks compared with medical masks in healthcare workers. BMJ open, 2015, 5.4: e006577.