コクランのRCTのメタ解析論文で効果無し


コクランのRCTのメタ解析論文で効果無し


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コクラン[1]は、英国に本部を置き、国際的なネットワークを持ち、質の高い情報を用いて健康上の意思決定をしたいと考える人に情報を提供するつ非営利団体です。

特に医学の統計情報に関する情報は特筆すべきものがあります。

Jeffersonらは 2023年1月に、マスクに効果は認められなかったとする RCTメタ解析論文を出しました。2020年11月にも同様のものが公開されていますが、2023年版には新型コロナを対象とした実験も追加されました。

何十年もインフルエンザや新型コロナなどの呼吸器系疾患に対するマスクの効果を調べるRCTが行われてきて効果が認められ無いのですから、効果は無いのです。

「結論は出ていない、今後の研究が必要」というのは現実を認めたくない人の詭弁にしか過ぎません。「効果があるという結果が出るまで続ける。その間は効果があるかどうかは不明であって効果が無いと結論できない」と言っているのに等しく、つまり「効果が無い」と言えるタイミングは永遠に来ないということです。こんな言説を信用するのでしょうか?

少なくとも害もあるマスクを推奨してよい理由にはなりません。


編集長が謝罪したことに筆者らは怒っている


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「コクランレビューの著者達を招集して緊急会議が開催され対応について議論された。私(ジャーナリスト)には彼ら(著者達)が”すべて合意に達した”と伝えられた。"我々(著者達)はこの扱いについてコクラン幹部に苦情を申し立てることを決定した"」

ですね。https://t.co/jOceY9xZH0

— 藤川賢治 (FUJIKAWA Kenji) @ 医療統計情報通信研究所 (@hudikaha) March 17, 2023

2023年3月に SOARES-WEISER 編集長はマスクRCTメタ解析論文が誤解を起こしたとして謝罪しました[3] 2文抜粋してツッコミを入れます。

『多くのコメンテーターは、最近更新されたコクランレビューが「マスクは機能しない」ことを示していると主張していますが、これは不正確で誤解を招く解釈です』と編集長は言っています。しかし繰返しになりますが、何十年分のRCTメタ解析で効果が示せてないのですから、効果は無いのです。

『一次エビデンスの限界を考えると、このレビューでは、マスク着用自体が呼吸器系ウイルスに感染したり拡散したりするリスクを軽減するかどうかという問題に対処することはできません』とも言っていますが、マスクで呼吸器系ウイルスを軽減できたというエビデンスも出せないのだから話は同じです。効果は有りません。


リスクバイアス図


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コクランレビューでは43のマスクRCT論文を見付け、その質をバイアスの観点から評価しています。図は先頭部分の抜粋です。

Aiello氏の論文が2010年と2012年とあり、これは今の後の解説でも重要な役割を果たすので、例にとってここではコクランでどのようなバイアスの評価となっているか少し解説します。Aiello論文それ自体については別途、解説します。

Aiello2010はどのようにランダム化がしているか分らないが、Aiello2012はランダム化の手法が書かれている。Aiello2010はランダム割付が被験者や研究者に隱蔽されていないが、Aiello2012年は隠蔽されているという評価となっています。

このようにRCT論文ごとに質を評価し、質の高いものだけメタ解析に組込みます。

Aiello2012は質が高いという評価となりメタ解析に組込まれていますが、Aiello2010は評価が低くメタ解析には組込まれていません。この判断は他のRCTメタ解析論文を読む上で重要な情報となるので強調しておきます。


メタ解析のフォレストプロット


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図がJefferson2023のメタ解析のフォレストプロットです。やはり AIELLO 論文を例に取り説明します。

Aiello2012 の論文では、インフルエンザやコロナ感染症の様な症状では、Risk Ratio は 1.10 (95%信頼区間 0.88〜1.38)となっておりマスクの方が10%悪く、信頼区間が 1を跨いでいるので有意差無しと読めます。そしてその他の論文も纏めて解析した結果は、Risk Raito 0.95(0.84〜1.09)と、マスクの方が5%良く有意差無しということになります。またAiello2012は全体に対するWeightは19.8%となっています。

他の論文もそれぞれのRisk RatioとWeightが書いており、インフルエンザやコロナ感染症の様な症状では、他の論文も纏めた解析は Risk Ratio が 0.95(0.84〜1.09) でマスクが5%良く有意差無しとなります。

インフルエンザやコロナ感染症の様な症状でマスクRCTのメタ解析では、有意差のある効果は認められませんでした。以下、図では、研究室での確定診断された場合のRCTメタ解析が記述されています。


参考文献

  1. コクラン(Cochrane), https://www.cochrane.org/ja/evidence
  1. JEFFERSON, Tom, et al. Physical interventions to interrupt or reduce the spread of respiratory viruses. Cochrane database of systematic reviews, 2023, 1.
  1. SOARES-WEISER, Statement on 'Physical interventions to interrupt or reduce the spread of respiratory viruses' review, 2023, 3.
  1. AIELLO, Allison E., et al. Mask use, hand hygiene, and seasonal influenza-like illness among young adults: a randomized intervention trial. The Journal of infectious diseases, 2010, 201.4: 491-498.
  1. AIELLO, Allison E., et al. Facemasks, hand hygiene, and influenza among young adults: a randomized intervention trial. PloS one, 2012, 7.1: e29744.